図書館からの推薦本

怪獣古生物大襲撃 : 怪獣として蘇った古生物たちの世界:土屋健他

 

怪獣大進撃

今回紹介する「怪獣古生物大襲撃」は、同じ出版社の「リアルサイズ古生物図鑑」の番外編、といった本です。

「リアルサイズ古生物図鑑」は、すでに絶滅してしまった古生物がどのくらいのサイズの生物なのか感じられるよう、それらの古生物を現代の風景に合わせて登場させるという斬新な手法が面白い本でした。

一方「怪獣古生物大襲撃」は、「もし、古生物が怪獣となって現代に現れたら…」という体で、現代の風景に古生物「風」の怪獣が描かれています。
本の中では、次々に来襲する怪獣に日本各地の都市が蹂躙される様子がリアルに描かれており、読んでいると映画「ゴジラ」で使われる例のマーチが頭の中に鳴り響きます。
また、怪獣の元となった古生物についての解説もあり、実在した古生物のユニークな生態を詳しく知ることもできます。

度重なる怪獣襲来…。日本はどうなってしまうのか。その結末を、本を読んで確かめてください。

 

なお、同じく怪獣が来襲する作品として、山本弘氏が書いた「MM9」という小説もあります。これは、怪獣襲来を自然災害ととらえ、その対処に奮闘する気象庁(!)職員の物語です。
現実には存在しえない「怪獣」を登場させるため、作者が考え出した理屈に、「さすがSF作家!」と膝を打つ作品で、おススメです。

(司書 中島)

2023年02月25日

教えて!タリバンのこと:内藤正典

 

2021年8月、アフガニスタンの政権は崩壊し、タリバンが実権を握りました。メディアは連日タリバンから逃れようとする人々の映像を流しました。

タリバンは悪魔のような組織なのでしょうか?

でも、ちょっと待って。アフガニスタンの政権が崩壊したのは、後ろ盾となっていた米軍を中心とするNATO軍が撤退したからであり、また逃れようとする多くの人々の映像を流していた日本を含む欧米諸国は、積極的に逃れてくるアフガニスタン人を受け入れたという事実もありません。

イスラム「国家」と言っても、多数の部族・宗派がひしめき合って暮らしているアフガニスタンは、それらの部族の代表が永延と議論をして物事を決めていく形の国家でした。多数派が全体のことをぱっぱと決めてしまう「民主主義」や「国家」という形は、もともとこの地域にそぐわないものだったと著者は書いています。
民主主義を掲げて突然やってきた米軍に爆撃されることはあっても、援助は政府の一部の人たちに握られて民衆には届かない。当然、多くの国民は米軍に恨みの感情しか持ちません。この辺りはベトナム戦争とも似ているかもしれませんね。

アフガニスタンで長年医療支援や用水路の建設を行ってきた故中村哲医師の言葉も多数紹介されています。例えば、こう言っています。「民主主義や自由や人権を持ってくるなら、戦闘機とミサイルでもってくるな」と。

諸外国がいくら援助をしても、多数の軍閥(部族)の上層部に流れているだけで、多くの国民は貧困状態です。兵士の多くは「食えない」から、お金をくれる軍に雇われているだけだと中村医師は書いていたそうです。「欧米が支援していると言っているのに、自分たちのところにはどうして何も来ないのか」という感情があるところに、国軍の兵士になってタリバンと戦えと言われても、民主主義を勝ち取る、などという意識は皆無なのです。

このように、タリバンやイスラム教の考え方の解説にとどまらず、なぜ欧米の民主主義が受け入れられないのかや、女性に対する考え方の違いなども解説しています。

「文化の違い」について考えてみるきっかけになる本です。

余談ですが、欧米とイスラムという対決構図でみると、まるでキリスト教とイスラム教は敵対しているように見えますが、実は想定している『神』は同じです。コーラン(最近はクルアーンと訳されることも多いですね)と聖書には同じ登場人物がたくさん出てきます。天使ガブリエルはコーランではジブリール、アブラハムはイブラーヒム、ノアはヌーフ…というように。イスラム研究者である著者の内藤先生は、同志社大学(キリスト教学校)の教授です。
久保先生にもお話しを伺ってみてくださいね、キリスト教とイスラム教のことを。

(司書 山中)

2023年02月09日

眠れなくなるほど面白い 図解 睡眠の話:西野 精治 (監修)

 

皆さん、ぐっすり眠れていますか?

スタンフォード大学の西野精治教授は、本格的に睡眠の研究をされており、この本で眠りについてのアドバイスをしてくれています。

すべて図解と文章でまとめられていて、内容も分かりやすく、スラスラと読むことができます。興味のあるところだけ読んでも大丈夫です。

(例)「午後の眠気はランチを抜いても撃退でない」
午後の授業中に眠気が襲ってウトウトする人、いますよね。この眠気は「アフタヌーン ディップ」と呼ばれていて、食後の満腹感からくるのではなく、体内時計(生体リズムの)の影響らしいです。みんな、ちょっと安心したかな?

睡眠はとても大切です。良質な睡眠を手に入れれば、明日からの生活リズムも変わるかもしれません。
何しろ人生の三分の一はみんな寝ているわけですから、睡眠は本当に大切なのです。

(スタッフ 鎌田)

2023年01月25日

いけない:道尾秀介著

 

ネタバレしない推理小説、あります

「推理小説」には、大きく2つの種類に分けられるように思います。

一つは、探偵役の登場人物が容疑者の中から犯人を絞り込んでいくもの。この種の小説は、読者にも犯罪の全貌が明らかにされておらず、犯人を指し示す手掛かりが文中に提示され、読者が探偵役の登場人物より早く犯人を見つけることができるか、知恵比べができるようになっていたりします。

もう一つは、読者に対してはあらかじめ犯人が明らかにされており、探偵役の登場人物が犯人を追い詰めていくもの。読者は、探偵と犯人の攻防を手に汗握りながら見守ることになります。

そして、どちらも、いわゆる「解決編」があるのが普通です。(解決しない推理小説なんて、フラストレーションがたまるだけですから)
前者では、容疑者を一か所に集め、探偵が「犯人はこの中にいる!」といった決め台詞とともに犯人を名指しするのが、後者では、探偵が犯人に「あなたはたった一つ、ミスをしました…」といった決め台詞とともに、言い逃れができない証拠を突き付けるのが黄金パターンです。
そしてどちらのパターンでも、先に「解決編」を読むとネタバレします。(当たり前です)
ところが、この本は、文章としての「解決編」が存在しません。章の最終ページに1枚の「何気ない」写真があるだけです。そして写真「だけ」を見ても、それにどんな意味があるのかわかりません。

写真の前には、なにか事件らしき出来事が描かれている文章がありますが、犯人はもちろん被害者すらも判然とせず、「何かが起きている」という感覚だけを抱かせます。
しかし、「何かが起きている」文章を読み、そのあとに写真を見ると、どんな事件が起きていたのかが推測できるようになり、「あっ!」や、「あーーっ!」という感嘆符が口から洩れることになります。

冒頭から順番に読む人にはもちろん、ついつい「解決編」を先に読んでしまい、ネタバレ状態で推理小説を読んでいる人にも、ネタバレが起きないので、面白く読める本です。

(司書 中島)

2023年01月11日
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